深蒼のグラヴィダーデ

スチームパンク風味近未来SFアドヴェンチャー
あらすじと人物紹介

「重力は蒼い―。

かつて、そこにあった世界。私の足元の、遥か下方に存在していたその世界では、重力は蒼色だったのだという。

人類はいつか、その色を再び目にすることができるのだろうか―」

ラケル・アナ・メデイロス、BC3031


 西暦3031年、地球。80年前におきた銀河系規模の磁場変動により、重力が極端に弱くなった世界。本来人間を地上にとどめる最大の 役割を果たしていたはずの重力の弱体化により、放っておけば、固定されていない全てのものが下ではなく、上へと浮き上がってしまう新環境でなんとか生き残るべく人類は重力固定装置を発明。海の大部分の水分がオゾン層周辺に移動し、そのまま海のようなものを作り出すという、完全上下が入れ替わるという様相を呈している。

 人類は水分のほとんどを失い、完全に崩壊してしまったかかつての地表を捨て、移住を決意。空中に都市単位の大きさの人口空中都市を作り、その空中都市の連合体を一つの「国」とすることで、かつてと同じような国家システムを保っている。「かつて」の生活を取り戻すことが人類の悲願であり、各都市は原型である都市の完全コピーの景観を持つ。いくら見た目が変わらないとはいえ、自然(弱重力)を機械の力で無理やりかつての地球と同じ環境に近いところまで近づけた住環境の中では、普段の生活も機械や先端技術の力無しにはまともに送ることができない。

 重力固定装置が壊れてしまえば、修理屋がくるまでその家の住人は町のあちらこちらに設置された緊急用の手すりやポールにつかまってその場をやりすごすか、室内の場合は天井に張り付いたままで過ごすことを余儀なくされるという奇妙な生活。

 移住から数十年、新しい暮らしも徐々になれた人類の人口は再び緩やかに上昇トレンド にあったが、慢性深刻資源不足に悩まされる空中都市では空中都市の拡張は難題だ。

 一方、急な天変地異により、 急遽放棄されたかつての地表には地中資源を始め様々な資源が放置されたままになっており、資源が乏しい空中都市の現人類にとって宝の山となっていた。資源不足とともに常時職不足であるこの世界、人生の 出世レースから外れたものに与えられた最後の救済策ーそれがトレジャーハンターとして資源を無事を空中都市に持ち帰り、成金として人生の勝者となることなのだ。

 一般的に「探索」と呼ばれているトレジャーハントには大きな難関があった。基本的に重力発生装置は空中都市が浮かんでいるより下の階層に作用することは無いので、「下」-かつての地表へ到達するためには自前で小型の装置を 用意する必要がある。それには技術力もコストもかかるため、財力のあるスポンサーが探索メンバーを募る、という形式が主流となっていた。行方不明になったり、事故が起きたりとなにかと問題が多いこの事業に重視するものはいつしか 命知らずのアウトローか、貧民ばかりとなっていった。

 そんな空中都市の一つ、新リスボン(ノーヴァ・リシュボア)に生まれ育った17歳の少年、ティアゴ・アンドラーデは高校卒業を直近に控え、進路を決めかねていた。公務員は高値の花、 技術職には頭脳と手先の器用さが足りない。常に職不足である空中都市では、無職になるのが目に見えている。自分を筆頭にまだ3人の弟妹を抱えるアンドラーデ家では彼を養う余裕は無い。 家族思いではあるが、無力な少年の数少ない長所である物怖じしない性格。家族を路頭に迷わせるわけには行かないと、彼は覚悟を決めてトレジャーハンターになることを決意する。

 一方、早熟の天才である若き物理学者、ラケル・メデイロスは不慮の死を遂げた父の同僚の台詞の謎を解き明かすために、私財を投げ打って地表への探索へと赴くことを決意する。それは旧リスボン大学に眠っているとされている人類の悲願である地表への帰還、それにあたって必要な海の地表への固定化につながる理論になると見られるメモの発見への手がかりを求めるための旅だった。

 ラケルは、社会の掃き溜めからなる5人のメンバーを連れて、今は打ち捨てられた、かつての地球―地表―へ、失われた理論メモの手がかりを求めて旅立つ。冒険の果てに、彼女の求める答えはあるのか―。

舞台紹介

ノーヴァ・リシュボア(通称リスボン)  旧リスボンと区別するために新リスボンと呼ばれている空中都市の一つで、空中都市連合の一つ―国家に相当する―新ポルトガルの首都。

 新ポルトガルの主要都市は他に新ポルトなど。周辺には新スペインなどかつてのヨーロッパ諸国の空中都市連合が存在する。
 この世界での都市間の移動は基本飛行機。

人物紹介

ラケル・アナ・メデイロス・・・物理と生物のダブル・ディグリー。非常に早熟な天才科学者。
アナ・ラケル・ソウザ・・・ラケルを目の敵にしている幼馴染。法曹一家出身。普通の女子大生。
ヴィンセンテ・フェリペ・メデイロス・・・ラケルの1つ違いの兄。早熟な家系のメデイロス家の伝統にもれず、非常に若い早熟天才数学者。
ティアゴ・ジョゼ・アンドラーデ・・・高校を卒業したばかりの無職の少年。
アマンダ・ミリアム・リリアナ・デ・カスティーリョ・・・家出少女
クラウディオ・ネルソン・ペナ・・・元学者で、現技術者。失業したて
ニーナ・ジュディ・オルテガ・・・プロ探索者
セルジオ・フェルナンド・リマ・・・プロ探索者、もといフリーター
フェデリコ・フランク・メデイロス博士・・・国を代表する科学者。ラケルとヴィンセンテの父。
フェリペ・オマール・サントーゾ・・・ヴィンセンテの元同級生で、院生。メデイロス兄妹を目の敵にしている。


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